【完】俺のこと、好きでしょ?
「……じゃあ、俺は帰る」
「え、もう帰るの?」
突然背を向け歩き出した有馬くんを、つい呼び止めてしまった。
彼はくるりと顔だけ振り返り、
「うん。見たかったのはその絵だけだし」
そうつぶやいて、一匹オオカミのごとく去っていってしまう。
「あ、ありがとう!昨日のこと、あたしに教えてくれて」
その背中に、思い切って自分の気持ちをぶつけた。
棗先輩とどうなったかを、あたしに教えてくれたことが嬉しかったから。
「……あんたが礼を言う必要なんてない。俺があんたに言いたかっただけだから」
「それでも、嬉しかったから」
「……そ」
掴み所がないのは相変わらずで、ちょっと困惑してしまったけど、それでもやっぱり、好きって気持ちに変わりはない。