【完】俺のこと、好きでしょ?
どこか真剣な表情で、絵の中にオオカミに指先で触れる有馬くん。
……意味のないものなんてない。
じゃあこの絵には、有馬くんにとってどんな意味を持つんだろう?
……そして、あたしにとっても、どんな意味を持つのだろうか……。
「いつも独りでいるオオカミは、俺」
「え……?」
「俺は一匹オオカミだから」
有馬くんの言葉に驚いた。
もしかして、自分が密かに周りから一匹オオカミと呼ばれていることを知っていたの?
そして、オオカミと自分を重ねて、絵を描いたってこと……?
「棗の描く慧星のように、俺が光るにはどうしたらいいのか考えてたらさ……月が思い浮かんだんだ」
そう言って、有馬くんの右手の指先は月に移動し、そっと愛おしそうに、絵の中の月を撫でた。
「月が、オオカミの俺を照らしてくれる」
腰に巻かれたままの左手に、さらにギュッと力が入り、有馬くんとの距離がより近く、密着する。