【完】俺のこと、好きでしょ?
未だに事態が飲み込めなくて、信じられなくて、チラリと顔を左に向ければ、有馬くんとパチリと目が合ってしまった。
……あ。
「だめ。俺を見てて」
咄嗟に逸らそうとしたら、有馬くんはそれを阻止するかのように、あたしの体をクルリと方向転換させ、向き合うような形に変える。
そのせいで、有馬くんの真正面の視線から逃れられなくなった。
そっと、有馬くんの唇が近づいてくる。
「俺のこと、好き?」
少しでも動けば唇が触れてしまうところでそう問われて、あたしはぼうっとしてしまった。
飾り気のない素直な言葉も、甘えるように聞いてくるその声も、全てがあたしの胸に突き刺さり、これ以上ないってほどに鼓動を早めていく。
「……好き」
真っ白な頭の中で、つい、つぶやいてしまったあたしの本音。
何度も何度も我慢して、抑えて、伝えないようにしていたのに……。
すると有馬くんは、かすかに微笑んでからあたしに顔を近づけた。
「……んっ……」
薄くてやわらかい唇が押し付けられる。
全身に電流が走っていくみたいに、身体が震えた。