【完】俺のこと、好きでしょ?
「ほら、こんな風に押さえつけられたら、どうすることもできないだろ?」
「有馬くん、スケッチブックが……」
落ちたスケッチブックに話題を逸らそうとしても、無駄みたいで。
「ねぇ、知ってる?満月の夜、月の光を浴びた人間がオオカミになる話」
あたしは有馬くんの下に押さえつけられている格好。
至近距離にある顔は、あと数センチもすれば触れることができてしまう。
そんなことを頭の片隅に置きながら、いきなりふられた話に、あたしは脳を働かせた。
「……えと……オオカミ男?」
ふと、気付いた。
すぐそばにある窓際から差し込む月光が、有馬くんを照らされていることに。
その光が、整っている有馬くんの顔をより一層艶めかせるように魅せている。