【完】俺のこと、好きでしょ?
この夏休み、あたし達は何度かいろいろなカフェを巡った。
そこで有馬くんは、たいていフルーツタルトを注文する。今のはそのときに気づいたことだった。
「そんなとこまで見てるんだ。気持ちわる」
有馬くんが、冷たい目でこちらを見る。
嫌がる様子がおかしくて、ちょっとしたイタズラ心が湧き上がってきた。
からかってみようと、あたしはニヤニヤしながら言葉を返してみる。
「だって、イチゴ食べてるときの有馬くん、可愛いから、つい」
照れるかな? 否定するかな?
どんな反応が返ってくるか、浮き立つ心を悟られないように有馬くんを見つめると、彼はいたって冷静な顔であたしをチラリと一瞥する。
「……あんたもね」
「……え?」
「あんたの場合、ケーキ食べてるときは2割増しくらい可愛いよ」
突然の可愛い発言、しかも2倍と付け加えられて、あたしは目を丸くして硬直してしまった。
「でも、1番可愛いのはキスしてるときかな。トロンってしてる目は、結構ヤバい」