【完】俺のこと、好きでしょ?
冷たく返しても、負けじと返ってくる。
この人、ちゃらんぽらんに見えて、結構押しが強い気がする。
「無理しちゃダメだからね」
「……え?」
思いの外、真剣な声に顔を上げる。
朝霧くんは、ちょっと困ったような顔であたしを見つめて微笑んだ。
「今日、俺がいなかったら、これはもっと遅くに終わってた。そしたら美月ちゃんは今よりも遅い時間に帰る羽目になってたんだよ?」
「……まあ、そうだけど」
「ね?俺がいて助かったでしょ?」
時計にチラリと目をやれば、確かにすでに5時を回っていた。
秋に近づくこの季節は、前よりも陽が落ちるのが早い気がする。
「美月ちゃんが我慢して、頑張りすぎて、いつか倒れちゃうんじゃないかってヒヤヒヤしちゃう」
「そんなヤワな体じゃないよ」
……でも、確かに。
あたしはこの人のおかげで、だいぶ助けられてる気がする。
今まで、こんな雑用を手伝ってくれる人はいなかったから、なんだか新鮮な気持ちになった。