【完】俺のこと、好きでしょ?



「なに言ってるんですか有馬先輩!今ちょうど絵に色を塗ってる途中じゃないですか!今片付けてしまうのはもったいないですよ!」



あり得ない、というような声色で、有馬くんにそう訴える女の子。



「大丈夫、明日続きするし」



「でも、時間を置いてから同じ箇所を塗ると、色の滲みぐあいに違いがでてきてしてしまいますよ?」



「…………」



女の子の言葉は正しいらしい。


有馬くんがなにも言い返せなくなっているからだ。



きっと、あたしが邪魔しちゃったんだ……。


あたしのせいで、有馬くんの絵を台無しにするのはいやだ。



「有馬くん、あたしはカバンを届けに来ただけだから大丈夫。あまり遅くならない程度に、頑張ってね」



「待って。じゃあ、塗り終わるまで待ってて。終わったら送って行くから」



……それは、全然問題ないけど……。


女の子の視線が痛い。


あたしは有馬くんの絵の邪魔をしてる……。きっと彼女も、そう思っているはずで、いい気はしないはずだ。



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