【完】俺のこと、好きでしょ?
有馬くんは唇をそっと離すと、いつもとは違う熱っぽい視線であたしを見つめた。
「やっぱ、何もしないとか無理。もうその熱、俺に移せばいいよ」
前髪をかき上げられ、額にキスが落とされた。
「有馬く……ダメっ……」
抵抗しようと両手で押し返そうとすると、今度はその手を片手で上に絡め取られてしまう。
「ダメじゃない」
「……っ!」
けれどその強引な仕草とは打って変わって、唇に落ちる口づけは羽で触れるように優しかった。
ただ、意地悪の仕返しのごとく何度も降りかかるキスは、あたしの身をくすぐらせてくる。
身をよじって逃げようとするが、オオカミと化した彼から逃れるなんて、不可能だった。