【完】俺のこと、好きでしょ?
「あれ、美月? 早かったね」
教室に戻ってきたあたしを、驚いた表情で出迎える梓。
さっき背中を押してもらったばかりなのに……申し訳ない気持ちになった。
「ごめん、梓。できなかった」
眉を下げ、笑みを浮かべる。
「え……?」
「有馬くんは、ヒナタちゃんを選んだんだ」
「どういうこと? 本人がそう言ったの?」
「ううん、直接は聞いてないけど……。
さっき、美術室にいったら有馬くんがいなくて、おかしいなと思って電話したらヒナタちゃんといたんだよね。
絵を完成したら、また一緒に帰ろうって約束してくれたのに、絵も完成させないままヒナタちゃんと一緒に帰ってたってことは、そういうことでしょ?」
「…………」
捲し立てるように説明してしまった。
梓がジッと、あたしを見ている気がする。
見透かされてる気がした。あたしの醜い部分を……。