【完】俺のこと、好きでしょ?
「わざとですよ。展示しても意味ないからって言って、途中で……昨日、急遽放棄したんです」
「なんで……」
ふと、有馬くんの言葉が思い浮かぶ。
〝もうちょっとで絵、完成するから。あれ描き終わったら、また一緒に帰ろ〟
ああ、もしかして、もうその必要性がなくなったからかな……?
あたしとなんて帰りたくなんてないし、約束なんて守らなくてもよくなったから……。
「有馬先輩は今回、展示する絵と……もう1つ絵を描いてました」
「え?」
心が沈みかけていたその時、ヒナタちゃんの唐突な声に、顔を上げた。
「2つ同時の作業で期限ギリギリなのに、展示会に出すつもりのない絵を優先して描いてたんです」
「……なに、それ……」
あたしそんなの聞いてない。
そもそも、展示会に出すものと、そうでないものの2つの絵を描いてたなんて、知らない。
そんなの、両方を完成させるなんて間に合うワケがないのに。
どうして展示会の絵を後回しにしたの?
そして、どうしてヒナタちゃんには言って、あたしには教えてくれなかったの……?