【完】俺のこと、好きでしょ?
「有馬先輩が突然、あたしの得意とする絵の技法について聞いてきたんです。
ウェットインウェットって言って、水彩画でよく使われるにじみ技法なんですが、有馬先輩はあまり使われなくて。
でも、どうしてもその絵にこの技法を使いたいらしく、あたしに聞いてきました」
「…………」
絵のことについて知識なんてない。
けれど有馬くんは、どうしてもその絵を最高のものにしたかったのだろう。
だってあの人は、作品のためになら出し惜しみしないもの。
あたしはそれを知ってる。
絵に対してまっすぐに、真剣に、情熱を捧ぐ有馬くんは、惚れ惚れするくらいかっこいいことも。
「そこであたしは、オススメの絵筆を教えたんです。それを昨日、一緒に買いに行ってました」
「……!」
じゃあ、昨日2人が一緒にいたのは、一緒に帰ってたんじゃないってこと……?
……あ。
片付けられずに置いてあった画材を思い出す。
もしかして、あれは帰って来てから続きをするために置いてただけ……?