【完】俺のこと、好きでしょ?
「もっと強く拒否んないと、他の男なら襲ってるよ?」
「……朝霧くん?」
おそるおそる目を開けると、朝霧くんはスッとあたしから離れて、背を向ける。
「でも俺、こう見えて紳士だから!好きな子を傷つけるとかできないんだよね〜」
グッと伸びをしながら、おちゃらけたように言ってみせる明るい声。
……朝霧くんが今、どんな表情をしてるのかわからない。
チラリと窓の方へ視線を向ければ、そこに有馬くんの姿はなかった。
もしかして、こっちに向かってるのかも。
「もっと早く、美月ちゃんの視界に入ってればよかったのかな」
後悔の念が含まれるような朝霧くんの言葉に、ズキンと胸が痛む。
……そんなこと、言わないで。
「迷子の子に泣かれて困ってた俺を助けてくれたとき、運命かと思ったんだけど。ちょっと出遅れちゃった。自業自得だな」
こちらを振り返ってはにかみながら、あの時助けてくれてありがとっと、言ってくれた朝霧くんに、さらに心臓がギュッ締め付けられる。
あたしはそっと、自分の胸に手を当てた。