【完】俺のこと、好きでしょ?
俺だけ見てなよ
息を切らし、廊下をひたすら走る。
こんなに全力で走ったのは、いつ以来だろう。
足がもつれそうになる。
心と体が一体となって、あたしの全部が、早く有馬くんに会いたいと、必死に叫んでいる。
有馬くん……有馬くん……っ!
「美月!」
「!」
壁も窓ガラスも、なんの隔てもない中で呼ばれたあたしの名前に、全神経が反応した。
廊下の向こう側に、会いたかった人がいる。
「有馬くん……!!」
そのまま、あたし達はお互いに駆け寄り……。
2人の始まりの場所とも言える美術室の前で、有馬くんはあたしを抱きとめた。
静かな廊下に、有馬くんとあたし、2つの影が落ちる。
外で創立祭のざわめきが聞こえる中、ここだけは静寂に包まれ、心臓はこれ以上ないくらいに騒がしかった。