【完】俺のこと、好きでしょ?
「俺の前で無防備な姿見せるあんたが悪いんだよ。思わず絵に納めておきたくなった」
「なっ……!」
「ほら、また赤くなる。そういう顔も描いてみたいけど、キリないから。とりあえず今はこっちきて。残りの色を塗りたい」
……残り?
その絵のどこに残りがあるのか、疑問に思った。
絵の中のあたしは、親切に色まで塗られている。
ただ、写実的な絵のまわりが空白なだけだ。
「ほら、こっちを見て。今から仕上げの色を塗っていくから」
机の上の画材から、筆を手に取った有馬くんは、あたしの存在をひとつひとつ確かめるように視線であたしをなぞる。
見つめられているだけなのに、その物憂いさ溢れる瞳がなぜだかくすぐったくって、あたしは視線を彷徨わせた。