【完】俺のこと、好きでしょ?
「なんで目、逸らすの」
な、なんでって……。
「余計なこと考えてないで、俺だけ見てなよ。そのくらい、簡単だろ」
とても真剣な瞳。
水分をたっぷりと含ませた筆が、あたしの絵に置かれていく度に、暖色系の色がジワリとにじんでいく。
まるで、あたしの心が有馬くんの色に染められているような感覚だった。
このまま、あたしの心は有馬くんの一部になっていくんだろう……そんな気さえした。
沈黙の中、おだやかな時間が過ぎていく。
「よし、できた」
やがて、有馬くんが筆を置いた。
「わあ……」
気づけば自然と、感嘆の声をもらしていた。
あたしを包む淡い色彩がしっとりと華やいで、特有の空気感を醸し出してる。
眠ってる少女は、暖かな陽だまりに包まれてるようで、背景が彩られるだけで、幸せそうな雰囲気がより増したように見えた。