【完】俺のこと、好きでしょ?
「あんたのせいで、俺はあんたのことばっかり考えるようになった。だから……」
完成した絵を置いた有馬くんが、再びあたしに向き直り、そっと手を伸ばしてきた。
そのまま、あたしの紅潮した頬に触れる。
「ねぇ、美月」
「……っ」
チュッと軽く触れるように、有馬くんの唇があたしの唇をかすめた。
「頼むから、俺以外の誰かの色に染まらないで」
紙のうえに垂らした色のように、染み込んでいく有馬くんの言葉。
「ずっと俺だけを見て、俺のことだけを考えてて」
そんなの……もう、ずっと前から。
この美術室で、偶然通りかかって画板の下敷きになっている有馬くんを見つけたときから……あたしは……。
「もう、他の男に、触れさせないで」
心も体も、有馬くんだけでいっぱいだった。