【完】俺のこと、好きでしょ?
有馬くんの、なんてことない言葉に胸がギュッてなるのはなんでかな?
笑ってくれると嬉しいのは、なんでなのかな……?
画材を片付け終えた有馬くんは、腕まくりした制服から覗くその逞しい手で、ノートをヒョイッと持ち上げてしまった。
「……あっ!」
そしてあたしの横を通り過ぎて、足で開けっぱだった美術室をあとにした。
「有馬くん!せめて半分は持たせて!」
「却下」
「だってなんか、罪悪感に苛まれてウズウズする!」
「大げさ」
あれ?あたし文章だけど、有馬くん単語でしか言葉を返してなくない?
って、そんなことはどうでもいいって!
「じゃあ、せめて……!!」
「慧?」
あたしの声とは比べものにならないくらい、キレイで高い、澄んだ声が聞こえた。
有馬くんがその声に反応し、ピタリと足を止める。
あたしは背後から聞こえたその声の主を見て、呼吸が止まりそうになった。