【完】俺のこと、好きでしょ?
「棗(なつめ)……」
有馬くんが呼んだのは、おそらく彼女の名前。
とても美人で、髪もあたしとは正反対で長くてサラサラ。
目もパッチリしてて、お人形さんみたい。
「棗、お前ずっと学校休んでたろ? なんかあったの?」
有馬くんは、棗さんと呼ばれたその女子生徒のもとへ歩み寄る。
その拍子にノートが1冊落ちてしまったけど、気にもとめていない様子。
何故だろう。
そのことに、胸がチクリと痛んだ。
「もう……慧ってば、人の心配しすぎ。
私は全然平気だよ。ていうか、ちゃんと先輩のことを敬いなさい」
コツンと柔らかく、有馬くんの頭をついた棗さん。
「一個しか変わらないだろ。ガキ扱いするなよ」