【完】俺のこと、好きでしょ?
「どうして俺に言わなかったんだよ!」
「だって言ったら、慧は私のこと引き止めるでしょ?」
ふたりは向かい合って、なにやら揉めているようだった。
「当たり前だろ? そんな無謀なことを勝手に決めて、しかも……留学なんて……棗には無理に決まってる!」
「ほら、すぐそうやって決めつける。私がしたいことくらい、私が自由に決める。
慧にとやかく言われる筋合いない!」
「……!!」
あんなに取り乱してる有馬くん、初めて見た……。
盗み聞きしてるつもりはなかったけど、聞こえてくる内容からはおそらく……棗先輩が有馬くんに、アメリカに行くことを伝えたのかな……?
あたしも梓に聞いて、初めてわかったこと。
棗先輩のことを何も知らないあたしでも衝撃を受けたくらいだ。
きっと有馬くんは、もっと驚いただろうし、戸惑うに決まってる。