夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
なんか不思議な感じ。
予選の時もそうだったけど、自由形一本だった私が今こうして平泳ぎをしている。
とにかく今は泳ぎ切らなきゃ。
私の今出来る事を精一杯、やるしかない。

でも泳げば泳ぐほど分からなくなっていく。

あれ?平泳ぎってどうやってやるんだっけ。
分からない、分からないよ。
泳ぎ続けているけど頭はパニック状態で、自分でも分かるくらいスピードが落ちていく。

このままじゃ、そう思った時。


『大切なのはタイミングですよ』


頭に先生の声が浮かぶ。
タイミング……。

『あのな……
お前は手と足が同時に動く癖がある。
意識してずらしてみろ』

地獄の特訓中の光景が思い出される。
高岡くんに何度も怒鳴られた。

そうだ。
同時に動かしちゃ駄目だ。
ずらさなきゃいけない。

『高瀬さん。
まず手をかいて下さい。
足はまだ伸ばした状態でいいです』

先生が教えてくれた言葉が浮かびその通りに泳ぐ。

『そして手が顔の近くへきたら足を動かし始めてください。
焦らなくて大丈夫ですから』

そうだ。
次に足を引き始める。
最後はちゃんと水を蹴る。
姿勢も気を付けながらこれを繰り返す!!

うん、いい感じだ、スピードも出てきた。

『しっかり意識して伸びて下さい。
指先やつま先まで』

焦らずに伸ばすところは伸ばす。
そうすれば体が平泳ぎに馴染んでいく。
自由形では感じた事のない胸の高鳴り。
泳法は違うけどやっぱり、水泳は楽しい。


「ぷはっ!!」


必死に、でも楽しく泳いでいたら私の手は壁へとついていた。
水から顔を上げて、息を整える。


「終わった……」


なんとか泳ぎ切った私。
泳いできたコースを見れば上から声が降ってくる。


「高瀬が3位でゴールインです!」


アナウンスの声が響き渡る。
さ、3位?その順位に頭が真っ白になった。
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