夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
大会が終わり部活メンバーと解散した私は1人でベンチに座っていた。
会場から少し離れた休憩スペース。
誰もいなくて静かすぎるその空間は寂しさが漂っていた。
でも今の私には凄く落ち着く。


「3位……か……」


震えた声が小さく消えていく。
皆の手前喜びはしたが本当は嬉しくもなんともない。
悔しくて、悔しくて。


「っ……辛いっ……」


私だって分かっている。
平泳ぎは難しくてたかが2週間で優勝できる訳がない。
そんなに甘い世界じゃない。

だけど。
生まれて初めて味わった“敗北”が想像以上に胸にクる。


「高瀬さん」

「……先生……」


後ろから聞こえてきたのは聞きなれた先生の声。
いつもは声を聞くだけで凄く嬉しくなるけど、今は。


「すみません。1人にして貰えますか……」


先生の声を聞くと哀しくなる。
こんなに情けない姿をこれ以上は見せたくはない。


「……高瀬さん」


先生の哀しそうな声。
そんな声に私は言わなくてもいい様な事を言ってしまう。


「失望しましたか……?
先生が一生懸命に教えてくれたのにこんな無様な結果に終わって……」

「何を言ってるのですか?
3位は凄くいい結果じゃないですか」


先生は優しく言ってくれる。
それが本心なのは分かっている。
分かっているけど。


「駄目なんですよ。
先生との約束を果たすには……3位なんかじゃ……」


オリンピック選手になる。
只でさえ大変な事だ。
なのにこんな所でつまずいている訳にはいかない。
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