夢が繋げた未来～何度倒れても諦めないで～
「私はもう以前の様には泳げない。
先生が好きだって言ってくれたあの泳ぎはもう出来ないです……」


水泳は大好きだけど、気持ちだけではどうにもならない。
今回の大会で痛いほど知らされた。
先生の夢は私じゃ、私なんかじゃ叶えられない。


「お願いですから1人にして下さい……」

「……」

「せ……先生……？」


私の体はすっぽりと先生に包み込まれていた。
先生の温もりが私の冷え切った心を癒してくれる。


「馬鹿ですよキミは……」

「え？」

「自分では気付いていないかもしれませんが……。
今日のキミの泳ぎは凄く素敵でしたよ」


え？何を言って。
呆然とする私の背中を撫でながら先生は優しく笑った。


「水泳が好きって想いが泳ぎに表れていました。
あの時と同じ、いいえ。
それ以上に輝いて見えましたよ」


先生は力強く抱きしめてくれる。
体から伝わる優しさに涙が溢れ出す。


「私……本当は……。
凄く悔しいんです……」


ゆっくりと語りだした私。
先生はただ黙ったまま耳を傾けてくれていた。


「今までは大会ではずっと負けた事がありませんでした」


自慢に聞こえるかもしれない。
でも、それが私にとっては当たり前の世界だった。


「大好きな水泳で負けたくない。
他に何の取り柄もないけど泳ぐ事だけでは誰にも負けたくなかった」


そう思ってずっと努力して。
優勝する事が水泳への想いを形に出来る唯一の手段だった。


「でも……今日……。
初めて誰かに負けたんです」


それは私にとっては屈辱でしかなかった。

水泳への想いが誰かに負けた。
私はそれが耐えきれないんだ。
誰にも負けたくなくて努力してきた今までが一瞬で消えていった。
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