夢が繋げた未来～何度倒れても諦めないで～
「君に1つだけいい事を教えてあげよう」

「え？」

「本当は言うか言わないか迷ったけど、君は知っとくべきだと思ってな」


原田選手はそう言って悪戯っ子みたいな笑みを浮かべた。
それはまるで、先生を見ている様で。
やっぱり、近くにいれば似ていくんだなと思っていれば原田選手の顔がすぐそこまで近寄ってきた。


「ちょっ！？」


慌てた私は彼から離れようとしたけれどそれは出来なかった。
掴まれた手のせいで距離を置く事も出来ない。
戸惑っていれば耳元で小さく囁かれた。


「あの時の勝負をするキッカケは、君の為だったんだよ」

「え……？
あれは私と高岡くんに、足りないモノを教える為じゃ……」


言いかけた言葉は無理やり押し閉じ込められる。
2つの声によって。


「原田選手！？何してるんですか！！」

「……原田くん、彼女から離れてください」


勢いよく駆け寄ってくる高岡くんと不敵な笑みを浮かべる先生。
原田選手は私から手を離すと両手を上にあげて離れていく。


「別に何もしてないからそんなに目くじらを立てるなって！」


笑いながら先生に近付くとスポーツドリンクを受け取り勢いよく飲んでいた。
その飲みっぷりに目を奪われていればいつの間にか先生が私の目の前へと立っていた。
驚いて目を見開けば先生は私の爪先から頭まで視線を向けると安心した様にタメ息を吐く。


「無事でよかったです」

「おいおい、何もしてないって言っただろう？」

「原田くんの、“何もしていない”は信用できません。
現に彼女の手を掴んでいましたから」

「手くらいいいじゃねぇか……」


半ば呆れ気味の原田選手と拗ねた様な先生のやり取りに思わず声を出してしまう。
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