夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
「いってき……まーす」


昨日は選抜に選ばれた事が嬉しくてあまり眠れなかったから凄く眠たい。
アクビをしながら家を出れば見慣れた顔が目に映る。


「よう」


自転車に跨りながら満面な笑みを浮かべる男。


「おはようー。今日は朝練するの?」

「おう!勿論!」


元気よく返事をするのは高岡くんだ。
家が遠いはずの彼がココにいる事に驚かないのはよくこういう事があるからだ。
前に朝練を一緒にしてから毎日とはいかないが気分によってこうやって迎えに来てくれるんだ。
連絡をする訳でもドアのチャイムを押す訳でもないけれど。
何故か高岡くんが来ている日は私も自然と早く家を出ている。
だから今まですれ違った事はないらしい。


「高瀬!早く乗れ!」

「あーい」


眠さからか返事すらまともに出来ない。
おぼつかない足取りで自転車に近付くと高岡くんが手を差し伸ばす。


「よろしくです」

「おう」


高岡くんは慣れた様に私のスクールバッグを自転車の籠へとのせた。
私は自転車の後ろに乗ると高岡くんの体に手を回した。
2人乗りはもう何度目だろうか。
そう思いながら彼の背中に顔を埋める。
2つの大きなスポーツバッグが少し邪魔だけど、それももう慣れた。


「じゃあ行くぞ」

「OK~!」


掛け声とともに高岡くんがペダルをこぎ出す。
ヨロヨロと動き出した自転車。
でもすぐにスピードが出てくる。


「きゃー!!」

「耳元で叫ぶな!」

「むりー!!」


高岡くんの運転は乱暴で危なっかしい。
だけどそれも楽しいんだ。
いつもならもっと騒ぐんだけど眠気には敵わず。
彼にしがみついたまま目を閉じた。
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