夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
でも、私にそんな資格はない。
あの事件前の私なら『絶対に先生の夢を叶えて見せます』と言い切っていただろう。
でも先生の夢を背負うなんて今の私には出来ないから。
先生の純粋な水泳への想いを、私が汚す訳にはいかない。
私は立ち上がり先生を見下ろす。


「先生の夢が叶う事を願ってます。
でも……それは私の役目じゃない」


ごめんなさい。
私は強い人間じゃない。
先生の期待に応えられる人間じゃない。


「高瀬さん!」


後ろから聞こえてくる先生の声。
私は聞こえないフリをして数学準備室を出る。


「……また逃げちゃった……」


誰もいない廊下に私の弱々しい声だけが消えていった。
ギリギリと痛む胸が私の心を壊していく。
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