夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
「高瀬 真希。
荒城中学の天才少女と呼ばれていた。
自由形をさせたら横に出る者はおらず将来のオリンピック選手候補だった。
でも中学2年の途中から試合に出る事はなくなった」


高岡くんの言葉に私は目を見開いたまま固まってしまう。
何でその事を。調べたって一体どうやって。
混乱する私をよそに高岡くんは冷静だった。


「インターネットで検索したらすぐ出てきた。
お前スゲェ有名な選手だったんだってな」

「そっか……」


ネットって怖いね。何でも分かっちゃうんだ。


「お前の過去も荒城中に俺のダチがいてそいつに聞いた」

「なっ!?」


じゃあ、全部知っているって事?
荒城中学ではあの事件の事が学校中に知られてしまった。
だから私はエスカレーター式であるにも関わらず、荒城高校には行かずに誰も受けていないこの学校に来たのだ。
事情も事情だから先生が調べてくれた。
誰も知らない、知り合いがいない学校に行きたかったから。


「悪い。こういう事は本人から聞かなきゃいけねぇのに……」

「……別に気にしてないよ」


確かにビックリはしたけど。
でもそれは。


「もう過去の事だからなんとも思ってない」


そうだ。もう終わった事。
だからいちいち気にする事ではないのだ。


「じゃあ何でそんな顔してんだよ!
過去の事ならそんな辛そうな顔しねぇだろーが!!」


高岡くんに怒鳴られ私はハッとする。
私は今どんな顔をしているのだろうか。
ズキズキと痛む胸。


「何言って……」


声が震えて次の言葉が出ない。
本当は分かっているんだ。
私は自分が大会に出ていない事が悔しいんだって。
いつも当たり前の様に立っていた舞台。
そこに立っていない事がこんなに辛い事だって。
今まで気付かなかった。
いや、考えもしていなかった。
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