夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
「さて……本題に入りましょうか」


よかった、特に気にしていないみたい。
心を撫で下ろしながら私は背筋を伸ばした。
そして頭を下げる。


「すみませんでした!!」

「え?」

「え?」


謝った私に驚く先生。
私も驚いてしまい顔を上げた。


「何で謝るんですか?」


キョトンとする先生に私は首を傾げた。


「だって、HR中に喋っていたお説教じゃないんですか?」


私が訊ねれば先生は、数秒ほど固まったが直ぐにクスクスと笑い出した。
私はついていけずにポカンと口を開いた。


「違いますよ。
だって高瀬さん達はさっき謝ってくれたじゃないですか。
だから僕は何とも思っていませんよ」

「え……じゃあ……どうして私を……?」


理由が分からず戸惑う私に先生は優しく笑いかけてくれた。


「少し聞きたい事があっただけですよ」

「そうだったんですか。
何ですか、聞きたい事って」


お説教じゃなくてよかった。
安心した私は笑顔を浮かべて先生を見た。
でもそれは、ほんの一瞬だけだった。


「荒城中学の天才少女」

「……えっ……」


先生から出された言葉に私の顔から笑顔が一気に消えていく。


「やはりキミでしたか」

「……」


何で先生が私の事を知っているの?
頭が混乱して言葉が出てこない。


「まさかキミが僕の生徒になるなんて思ってもいませんでした。
……凄く嬉しいです」


先生の優しい声がもはや呪文にしか聞こえない。
グルグルと頭の中を支配するのは遠くて近い私の過去だった。
< 7 / 362 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop