夢が繋げた未来~何度倒れても諦めないで~
「……んっ……?」

「大丈夫ですか!?」

「高瀬!!」


目を開ければ心配そうに私を覗き込む先生と高岡くんがいた。


「……大丈夫です。
ご心配をおかけしました」

「お前……どうして?
最初は泳げてたじゃねぇか!凄く綺麗で見惚れちまうくらい!
なのに……」


悔しそうに顔を歪める高岡くんに私は俯いて苦笑いを浮かべた。

“綺麗”か。
凄く嬉しいけど泳ぎ切らないと意味がないよね。
タメ息を吐きそうになった時、聞き慣れた優しい声がその場を包み込んだ。


「高瀬さん。
落ち込まなくていいんですよ、まだ始めたばかりじゃないですか」

「先生……でも……」


泳げない事がもどかしい。
そう思っていればポンポンと頭を叩かれる。


「無理は禁物です。
キミは再び水泳と向き合う事を決めた。
それだけで大きな1歩なんですから」

「っ……」

「ね?」


柔らかい笑みに思わず頷いてしまう。
先生はやっぱり凄い。
彼の言葉ならどんな事でもすんなりと胸に溶け込んでいくから。
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