いちご
レモンパイ
「──っもう、最悪!」
私はぷんぷん怒りながら、少し泣きながら歩いていた。
2年付き合った彼氏とたった今別れたばかり。
きっかけは、彼氏の浮気だった。
──私って、浮気されるようなどうしようもない女だったんだ。
23才、独身。
まだまだこれからじゃないか、という人があるかもしれない。
確かに、現代は晩婚化が進みつつあるし…
なんてことも言ってられない気分なのだ。
アパレル関係の仕事について2年。
そう、ちょうど彼氏(今ではもう元カレ)と付き合い始めたのもあの頃だった。
知り合いの紹介でたまたま行った美容室。そこで見習いをしていたのが彼だった。
お互い、まだ仕事に慣れていなくて、その大変さに共感したのか、頻繁に会うようになった。
分からないことだらけの職場、知り合いもまだ少ない世界の中で、お互いを励みにして頑張ってきた。
──はずだった。
でも、それも私だけだったみたい。
あれから2年経ち、仕事にもだいぶ慣れ、「そろそろ結婚?」なんて浮わついた考えもチラチラと頭に浮かんでいた。
その矢先。
仕事帰りに同僚とご飯を食べた帰り、浮気相手と仲良くお手々なんかを繋いで街を歩く彼を見つけてしまったのだ。
それから1週間。
何度彼からメールや電話が来たか分からない。
無視し続けていたが、さすがに着信が鬱陶しくて、百度目の正直で電話に出た。
「お願い、出てきて。ちゃんと話そうよ」
そう言って泣きつかれてしまった私は、別れる覚悟を決めて待ち合わせのカフェに向かったのだった。
冗談じゃない。
なんで女の私が毅然としていて、あっちがピーピー泣いてるんだ。
思い出すだけで腹が立つ。
──ん?なんだろう、この甘い香り。
しばらくムキになって歩いていた私は、前に何度か通り過ぎたことのある裏道に入っていた。
少し向こうに、可愛らしいピンクの屋根が見える。
どうやら、甘い香りはそこからしてくるようだ。
甘いものが大好きな私は、怒りより好奇心が勝って、その建物へと近付いた。
ピンク屋根の前まで行くと、正面の窓ガラスに、これまた可愛らしいペイントでこう書かれていた。
──『ケーキ工房*瞬』──
私はぷんぷん怒りながら、少し泣きながら歩いていた。
2年付き合った彼氏とたった今別れたばかり。
きっかけは、彼氏の浮気だった。
──私って、浮気されるようなどうしようもない女だったんだ。
23才、独身。
まだまだこれからじゃないか、という人があるかもしれない。
確かに、現代は晩婚化が進みつつあるし…
なんてことも言ってられない気分なのだ。
アパレル関係の仕事について2年。
そう、ちょうど彼氏(今ではもう元カレ)と付き合い始めたのもあの頃だった。
知り合いの紹介でたまたま行った美容室。そこで見習いをしていたのが彼だった。
お互い、まだ仕事に慣れていなくて、その大変さに共感したのか、頻繁に会うようになった。
分からないことだらけの職場、知り合いもまだ少ない世界の中で、お互いを励みにして頑張ってきた。
──はずだった。
でも、それも私だけだったみたい。
あれから2年経ち、仕事にもだいぶ慣れ、「そろそろ結婚?」なんて浮わついた考えもチラチラと頭に浮かんでいた。
その矢先。
仕事帰りに同僚とご飯を食べた帰り、浮気相手と仲良くお手々なんかを繋いで街を歩く彼を見つけてしまったのだ。
それから1週間。
何度彼からメールや電話が来たか分からない。
無視し続けていたが、さすがに着信が鬱陶しくて、百度目の正直で電話に出た。
「お願い、出てきて。ちゃんと話そうよ」
そう言って泣きつかれてしまった私は、別れる覚悟を決めて待ち合わせのカフェに向かったのだった。
冗談じゃない。
なんで女の私が毅然としていて、あっちがピーピー泣いてるんだ。
思い出すだけで腹が立つ。
──ん?なんだろう、この甘い香り。
しばらくムキになって歩いていた私は、前に何度か通り過ぎたことのある裏道に入っていた。
少し向こうに、可愛らしいピンクの屋根が見える。
どうやら、甘い香りはそこからしてくるようだ。
甘いものが大好きな私は、怒りより好奇心が勝って、その建物へと近付いた。
ピンク屋根の前まで行くと、正面の窓ガラスに、これまた可愛らしいペイントでこう書かれていた。
──『ケーキ工房*瞬』──