いちご
客に向かって「あんた誰?」はさすがにないと思うのだが。


怒りと戸惑いをなんとか抑え、チャラ男を見据える。


「上野いちごです。」




こんな柄の悪い人間が、美味しいレモンパイを作ったなんて。
にわかには信じられない。



「あっそ。食ったらさっさと出てけよ」




はあぁぁぁっ!?



自分の顔がみるみる赤くなるのが分かる。

「照れ」ではない。

「怒り」だ。




反論の言葉が喉まで出かかったとき…




「瞬、今のはホントなし。接客態度改めてって、いつも言ってんじゃん。そんなんじゃいつまで経っても自分で接客できないよ?」



玲くんが店長に説教を始めた。

なんか…立場逆なってない?




「玲が接客やってるんだからいいだろ。俺は客があんまり増えると困るんだよ」

「そんなこと言って、ほんとは瞬だってお客さん来ると嬉しいくせに」

「うるせっ」



ふて腐れたような顔をして、店長はとっとと裏に引っ込んでしまった。
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