Reason
「俺、帰るけど一緒に帰らない?」
今日は部活が無いんだ。
と付け加えながら、
宿屋くんは椅子から立ち上がり
少し前かがみになって、
机の横にかけたカバンを取りながら
わたしに聞いてきた。
突然窓から入ってきた柔らかい風で
宿屋くんの前髪がサラサラ揺れる。
隣に居るわたしの鼻に
いつもの柑橘系の匂いに混じって、
微かにシャンプーの香りが届いた。
「もちろん!」
わたしは急いで帰りの支度を始めた。
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