アイドル君と私
拓海の呼び掛けに、一生懸命ペンライトをふる望の隣で咲は戸惑っていた。
「ん?どうかした咲?」
「あっ、いや…」
「あっ!そっか?咲は会ってるっ…!」
そう言いかけた望の口を慌てて塞ぐ咲。
「望のバカ!こんなとこで言っちゃ…!」
「んぐっ…!」
苦しそうに咲の手を離す望。
「はぁ―…あのね!うるさくて誰にも聞こえてないわよっ」
「けどっ…」
「いーから、MC!MC!」
そう言って望はRetのMCに夢中に聞き入っていた。
ったく…。
少し周りをキョロキョロしながらも、再び咲もステージに視線を向ける。
そして、そのままコンサートは順調に進んで行く。
Retは客席の近くに行ったり、全力で広いステージを駆け抜ける。
ライブの構成にファンは興奮しっぱなしだ。