アイドル君と私
咲は、そんな光景を見て胸がぎゅっ…と締め付けられるような気持ちでいた。
私…この曲聞いて良かったの?
Retの…想いが詰まった大切な曲。
彼等は、この場所が大事で、
沢山のファンの人達が大事で、
何があっても、それは揺るぎないもので…
ここは、
少し顔を上げて、咲は廉の少し切なげに歌う姿を見つめた。
ここは
彼の
白石廉の…
彼の…居場所なんだ…。
ペンライトを下げ、咲はうつむく。
そんな咲に望が気づく。
「咲っ?どうした…?」
「望……私…」
「えっ?具合悪いの?」
「……ううん、でもごめんね?…帰るね?」
「…えっ!?」
自分の荷物を持って、咲が席から離れる。
「ちょっと―!咲っ―!」