アイドル君と私
「……えっ…?」
…んっ?
何だろう?
今、ドキンッって…?
私は自分の胸を抑えた。
「それじゃあ、ありがとうございましたっ」
「あっ、こちらこそ…ありがとうございました―」
本を持って出口に向かった白石廉に、私は一礼をしながらそう言った。
頭を上げると、白石廉の姿はもう見えなくなっていた。
「はぁ―…何か、私も緊張したかも?」
確かに“二度目まして”
だったけど、まさか白石廉が覚えてくれてるとは思わなかったなぁ…。
そうだよ、多分それにビックリしての“ドキンッ”だったんだよ。
まるで自分にそう言い聞かせるようにそう思い直して、私は気を取り直し、再び仕事に戻った。