アイドル君と私
そう思った咲だったが、頭を左右に振り、もう一度作業に戻る。
「はぁ―…仕事仕事っ!」
と、そこへ。
「こんばんはっ」
声をかけられ、顔を上げた咲だけど、
誰の声かは分かっていた。
「…廉くん…」
「こんばんはっ」
廉はいつもの様に、ニット帽にだてメガネをかけて少し頭を下げた。
「…あっ…」
少しドキンッ…と胸が鳴る。
「今…雑誌持って来ますね?」
咲が注文棚から雑誌を持ってくると、 廉に渡した。
「ありがとう…」
「じゃあ、お会計お願いします」
「…うん」
そして、会計を済ますと、廉が少し小声で話しだした。
「咲ちゃん、昨日はゴメンね…?」
「えっ?あっ……ううん?」
「渡したい物があるって言ってたから…気になって…」
「あっ…えっと、お礼がしたかったの…」
「えっ?お礼?」
「うん、コンサートのお礼…」
「えっ!?いいよ―あれは、俺がお礼したくて誘った事がコンサートだったんだからっ」