アイドル君と私
「そうなんだけど、やっぱり…私途中で帰ったし…申し訳なくって」
「そんなことはないよ…」
「でも、ゴメンね?もう渡そうと思ったもの手元に…なくって…」
そう言うと咲はうつむいた。
「あっ…そうなんだ?」
廉も言葉に詰まり、少しうつむく。
少し考えて、廉が顔を上げる。
「あのっ…咲ちゃんっ」
「…はい?」
「ちょっと、紙とペン貸してもらってもいい?」
「えっ?…うん」
廉の言葉に咲は、ペンと紙を差し出した。
すると、廉は紙に何か文字を書き出した。
そしてその紙を咲の方へ向ける。
紙には…。
“昨日のバレンタインって
誰かに渡した?”
「……えっ…?」
廉は頬をかきながら、少しうつむいているだけだった。
少しとまどいながらも咲はゆっくりとペンを取り、廉の文字の下に書きだす。
“会社の人には。”
そう書いて、廉に見せる。