アイドル君と私
サビが終わり…曲はBメロへ行く頃には、廉の歌詞が咲の胸の中に入り込み、
曲の終わりが近づいた頃には、
すでに咲の瞳からは涙がこぼれ落ちていた。
「……あれ…?」
咲はテーブルに落ちた自分の涙に気づく。
なんで…?
いい歌だから?
なんで…こんなに泣けてくるんだろう…?
そして曲が終わり、咲はイヤホンを外した。
「……廉くん…」
自分の涙の意味が分からない。
でも、一つ思ったのは、
彼には…
廉くんには、きっと、
“好きな人”がいる…?
もし…そうだとしたら、
それは、普通のことで
でも
私は―…
知りたくなかった……のかな?
咲は顔を抑え、うつむいた。
涙がポツポツと落ちる。
と、そこへ。
ガチャと誰かが入ってきて、驚いた咲が顔を上げる。
入ってきたのは…