アイドル君と私


9:00。


「ふぅ―…もう9時か」


咲が時計を見ながら発注伝票の整理をしていた。


「…本当に来るのかな?でもこないだもちゃんと来たし、でも…別に当日には来ないかも…」


15日。


そんな事が朝から頭を離れなくて、今の時間までずっとこんな感じ。


「ダメダメ!考え過ぎっ」


頭を左右に振って、私は目の前の仕事を進める。


「…でも……」


やっぱり気になって、手が止まった時、
入り口の方から、走るような足音が聞こえて私はそっちの方を向いた。


「……あっ…」


その人は私に気づくと、息を切らしながら目の前に来た。


「はぁ―…はぁ―…」


「いらっしゃいませ……あの、走って来られたんですか?」


「うん、店の前の道からだけどっ…はぁ―…」



< 29 / 545 >

この作品をシェア

pagetop