アイドル君と私
9:00。
「ふぅ―…もう9時か」
咲が時計を見ながら発注伝票の整理をしていた。
「…本当に来るのかな?でもこないだもちゃんと来たし、でも…別に当日には来ないかも…」
15日。
そんな事が朝から頭を離れなくて、今の時間までずっとこんな感じ。
「ダメダメ!考え過ぎっ」
頭を左右に振って、私は目の前の仕事を進める。
「…でも……」
やっぱり気になって、手が止まった時、
入り口の方から、走るような足音が聞こえて私はそっちの方を向いた。
「……あっ…」
その人は私に気づくと、息を切らしながら目の前に来た。
「はぁ―…はぁ―…」
「いらっしゃいませ……あの、走って来られたんですか?」
「うん、店の前の道からだけどっ…はぁ―…」