アイドル君と私


スタジオまでの廊下を歩きながら、廉は窓から見える景色を眺める。


“呼び方”かぁ…。


そうボソッと呟いた。


ーー


その日の撮影は、終了時刻が遅くなり、結局塚元のお店には行くことは出来なかった。


そして、連ドラの放送日が近くなったある日。


長い待ち時間の合間に、 廉と咲は久々に電話していた。


「ねぇ?咲ちゃん」


『うん?なに?』


「咲ちゃんって、周りからどう呼ばれてる?」


『えっ…?周りから?』


「うん…」


『え―…なんだろ?普通に“咲”が多いかなぁ?私、あだ名とかあんまりなくって…』


「そう…なんだ?」


『廉くんは?』


「俺も“廉”か“廉くん”だね?」


『ふふっ、そうなんだ?でも…それがどうかしたの?』


「あっ…いや、別にっ…何となくね?」



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