アイドル君と私


「じゃあ、あっち行こっか?」


そう言って比奈はドリンクを持ったまま店内の奥のソファー席に向かった。


そこに座る2人。


「……ここで言って?」


「ひぃ…」


「大丈夫よ、その方があやしまれないでしょ?」


比奈の言葉に廉は軽くうなづいた。


周りはガヤガヤしていて、とても2人の会話は聞こえない。


そして廉がゆっくり口を開いた。


「ごめん…ひぃ、俺ひぃの気持ちには……答えられないっ…」


横顔のまま話す廉の顔を、切なげな顔で見つめる比奈。


「比奈も知ってる通り…俺には今、大切な子がいるんだ、その子のこと…不安にさせたくない…」


そんな廉の言葉に、少し ふふっ…と笑う比奈。


「ハッキリ言うなぁ―…」


「……ごめん」


「ううん、私の方がごめん…」


「えっ…?」



< 426 / 545 >

この作品をシェア

pagetop