アイドル君と私


その日の仕事終わり。


咲からの返信はない。


廉が急いで閉店間近の本屋に向かう。


が、咲の姿はない。


そこに、前に会った望の姿を見かけて、
声をかけた。


「あのっ…星野さんはっ!?」


廉に声を掛けられ、望はビックリする。


「あっ…!廉っ!?」


「あっ…うん、咲ちゃんはっ!?」


「……っ…やっぱり、聞いてないの?」


「えっ…?」


「咲っ…お店、移動になったのよ…?」


「……えっ……移…動…?」


廉は、少しうつむいた。


「それって……俺のせい…?」


「……。」


廉の言葉に、望は困った顔をする。


そして…廉はその場を離れようとする。


「廉っ?咲の居場所…聞かないのっ!?」


廉は望に背を向けたまま、口を開く。


「咲ちゃんの決意を…壊したくないっ」


「咲の気持ち…受け入れるの?」


「俺も…彼女が大切なんだ……これ以上、
傷つけたくないっ」


「…廉っ…」


廉はそのまま…歩いて行ってしまった。


廉の後ろ姿を…望は見ていた。



あんたたちは…お互いのこと、
想い過ぎだよっ。


もう少し…自分の気持ちも

大切にしなよ…。



「……2人とも……バカ…」


そして、望は仕事に戻る。



違う職場で働く咲。


仕事に向かうしかなくなった廉。



2人は


別々の道を歩くことに…。



もうすぐ、2人が付き合って
一年が経つ頃の初夏の日だった…。




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