アイドル君と私


洗面所で、咲はため息をついていた。


「はぁー…」


やっぱり私、こういう場慣れないなぁ…。
社会人、何年目よ?


慣れないと…。


……慣れる?


慣れた方が……いいんだよね?


今……誰の顔が浮かんだの?


咲はそっと胸に手を当てる。


胸の奥が……痛い。


ふいに携帯を見る。


「バカ…携帯も変えたじゃないっ…かかってくるわけ…ないでしょ?」


……忘れなきゃ……。



スッと携帯をしまうと、咲はトイレを出る。


すると、通路の壁に勇介が立っていた。


「…えっ?」


「あっ、出てきたっ」


勇介はニコッとして、咲は見ていた。


「えっと……私っ?」


「そうっ、星野さん待ってたんだっ」


「えっと…ゴメンね?今席に戻るね?」


咲が席に戻ろうとすると、勇介は咲の手をつかんだ。


「……えっ?」


「いーじゃん、2人にしてやろーよ?俺達は出よっ?」


「あのっ…ちょっと…!」


勇介はそのまま咲の手を引っ張りながら、
お店を出て行く。


そして2人は外に出た。


「あのっ…良かったんですか?」


「うんっ、いいよっ」


ニコッとして、勇介は歩き出す。


本当に…良かったのかな?


麻里ちゃん置いてきたけど…。



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