アイドル君と私


「勇介っ」


「えっ!?」


「そう呼んでよっ?」


「あっ…いやー…それはさすがに…」


「えっ?この歳で呼び捨てに照れてんのっ?
可愛い~ねっ?」


「……っ!?」


かっ…可愛いっ!?


咲は勇介と反対の方を向いて、胸を抑える。


びっ…ビックリしたぁ


“可愛い”なんて、あまりにも久々に言われたから、どんな顔したらいいのか分からなかった…。


「ねっ?ちょっと聞いてる?咲っ」


「あっ…ゴメンっ」


「ほらっ、呼んで?勇介って…」


「な…だから、無理だって…」


「えー?じゃぁなんて呼ぶの?」


「えっ…と……高山くん?」


「学校かっ!」


「えっ…じゃぁ……勇介くんっ?」


「んー…まぁ~いっか?」


そう言ってジュースを飲む勇介。


勇介に気づかれないように、咲はため息をつく。


上手く出来ないなぁ…
相変わらずだ…私は…。


そして、映画が始まる。


ーー


映画中、勇介が飲んでいたドリンクを置いて、
咲を見た。


そんな勇介の視線に気づく咲。


「……えっ?なに?」


少し小声で聞く咲に、勇介は平然と答える。


「ダメなの…?見てたら…」


「えっ…!?映画…見てよ?」


そう言って咲はスクリーンを観る。


勇介も少しニコッとして、前を向いた。




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