アイドル君と私
咲の戸惑った顔に、勇介はただ笑顔を見せていた。
私はー…
彼といて、いいんだろうか…?
彼を…傷つけないんだろうか…?
答えの分かるようで、ハッキリと見えない問いかけに、咲は…とまどっていた。
ーー
ある日。
Retのドームツアーの打ち合わせ日。
話し合いに盛り上がるスタッフと、拓海と江真。
それに対して、廉は心ここにあらずの状態だった。
そんな廉に、江真が気づく。
そして打ち合わせが終わり、皆バラバラに部屋を出て行く、けど廉は手にペンを持ったまま動かずにいた。
「廉っ」
「…あっ、なに?江真っ」
「ちょっとっ…」
「えっ…?」
江真に手招きされ、2人は休憩ルームでコーヒーを飲みながら座った。
「……どうした?」
「えっ?なにが…?」
「バカ、顔に書いてあるよっ、元気じゃないって…」
「……っ…」
廉は紙コップの中のコーヒーを見つめる。
「……廉っ?」
さっきより、少し落ち着いたトーンで聞く江真に、廉がゆっくり口を開く。