アイドル君と私
「簡単なことじゃないから…真剣に考えて欲しいっ…俺が出発するまでに…返事教えて?」
「……はいっ」
「オッケーなら、その指輪をしてきて欲しいっ」
「……分かった」
ゆっくりうなづき、咲はそっと指輪に手を伸ばす。
その先に…勇介の笑顔が。
私…この人に、ずっと助けられてたんだ…。
情けない顔も、何度も見せたのに…。
ーー
そして帰りには“最後”と言って、
咲にピンクのガーベラを渡して勇介は帰って行ったー。
部屋に入ってカバンを置き、
指輪を置こうとすると、
棚の上の伏せられた写真たてが目に入る。
それにゆっくり手を伸ばし、
立てようとした所で…咲の手が止まる。
「自分のこと…私きっと、心の中に…答えがあるのかな…?」
そんな事を考えながら、
咲の長い夜な更けて行ったー。