アイドル君と私
某日ー。
ドームツアー、リハーサル中のRetの3人。
江真はスタッフと打ち合わせをしている。
廉は一人、センターステージの少し後ろの客席に座り、リハーサル風景を眺めていた。
と、そこに拓海がやってくる。
タオルを頭に巻き、廉の隣に座る拓海。
「廉くんっ」
「拓海っ…」
「順調だね?」
「あぁ、江真のおかげでなっ?」
「本当、張り切り者だよねー」
「ははっ」
2人してメインステージを眺めていると、
スタッフの声が聞こえてくる。
「じゃぁ、一度流してみまーすっ」
スタッフの声と同時に、曲が流れてきた。
流れてきた曲は、咲も見に行ったコンサートで歌った「thankfull」だった。
曲にじっ…と聴き込むような廉に、
拓海が口を開く。
「この曲、コンサートで歌うの久々だよね…?」
「えっ…?あぁ…うん」
そう言った廉の横顔を見て、拓海がそっと口にする。
「廉くんっ……会いたい?」
「……えっ?」
「咲ちゃんに……会いたい?」
「……っ!」
拓海の言葉に、廉は一旦視線を落として…。
「……なに言ってんだよ?」
「別におかしな事は聞いてないよっ?
ただ…廉くんは今でも彼女に会いたいのかなっ…て」