アイドル君と私
そして。
その瞬間は本当に突然訪れた。
時刻が9時を回った頃。
お店の閉店は10時。
早番の望はとっくに帰り、私も閉店に向けて商品整理に回っていた。
平日のこの時間帯なだけあって、お客さんも数人しかいない店内。
雑誌コーナーの整理をしていると、隣の棚の方から女の人の声が聞こえてきた。
「えっ…?本物っ?」
「まさかぁ~違うよ、こんな所にいるわけないじゃん~」
「だよね~?」
私はそんな会話を交わす、OLらしき二人組をチラッと見た。
「……ん?」
誰の事言ってるんだろう?
振り向き直し、隣の棚に移ろうとした時。
ドンッ!
バサバサバサッ…。
「……った」
よそ見をしていた私は、前から来ていた人とぶつかってしまった。