ただ、逢いたくて
「んンっ―…」
気づいた時には、もう目の前に彼がいて腕を引かれ唇が重なっていた。
離れようにも、ガッシリと顎と頭を押さえられているためビクともしない。
ドンドンと力を込めて彼の胸を叩くが勿論彼の手は緩むことはなくて、逆に強まるばかりだった。
何なの…?
いきなり彼女になれだとか意味分からないこと言うし、そうかと思えば次はキス。初めてだったのに…。一体どうして――
やっと解放されたけれど顔との距離があまりにも近くて、自分でも顔がみるみる赤く熱るのが分かった。
「っ…どうして!!?」
やっと吐き出された声は、ひどく小さくて、かすれたような声しか出ない。
見上げれば整った綺麗な顔にブルーの左目…
どこか吸い込まれるような強い力に戸惑いながらも彼を睨み上げる。
「……文句言おうが、もう俺のモノだから」
「そんなっ!!勝手なこと言わないでよ。ファーストキスだったのに…どうしてこんなことするの」
「美優」
ドキッ
彼の低く甘い囁きと、有無を言わさないような鋭い目付きにドクッと胸が高鳴る。
どこか惹き付けられるカリスマ性に一瞬全てを見透かされた気がした。
「……っ」
「俺からはもう逃げれねぇよ?」
小さくフッと笑って、覚悟しとけよという台詞を残したまま踵を返し教室から出ていってしまった。
なにかに捕われたかのように彼から目を離せない。
「アンタのモノなんかになんて、ならないんだから」
そう呟いたのは彼が資料室から出ていった五分後だった。