ただ、逢いたくて

やっと解放されたかと思ったのに、次はこの状態。

その行動の意味が分からなくて、彼を見るがあまりにも顔が近くにあって声を失ってしまう。


木村くんの両手は机の上にあり、あたしの体を挟むようにしている。顔は、目線の高さと同じくらいにあって、少し腰を曲げている格好。


屈んでいるから、シャツの中が丸見えで思わずそこに視線が集中してしまう。

ゴツゴツした鎖骨はどこか繊細で、色気が惜しみなく滲み出てている。微かに香る香水も、彼の魅力を引き出すかのようで、ほんのり甘い匂いがした。


そして、頭の上に影が落ちてきたかと思うと、さっきまで机の上にあった左手があたしの頬に触れ、静かに唇が重なったのだ。


< 17 / 48 >

この作品をシェア

pagetop