ただ、逢いたくて
そんな重い雰囲気を作っているのにも関わらず投げかけられた、笑みを含む軽い一言…
それにあたしの怒りは限界を超え、プチッと張り詰めていた糸が切れてしまった。
「〜〜〜っ!!!怒らせてるのはアンタでしょ!!いい加減にして。あたしは、木村くんの玩具じゃないの。ただの遊び道具なんかじゃないっ!!あたしのファーストキスの相手は、本当はけいちゃんだったのに……どうしてくれんのよっ!!返してよ、この自己中男!!!!」
ハァハァと息を荒くさせて興奮気味のあたしは、これでもかと言うくらい木村くんを睨みつける。
だけど、そんなあたしを一気に沈める言葉が落ちてきた――
「…けいちゃんって誰?」
「えっ?」
「……美優の好きな男ってけいちゃんってやつ?」
「そんなことどうでもいいでしょっ!!?それより、木村くんどうしてこんな……って…え?どうして知って…」
「さっきお前が言ったんだろ」
――あたしのファーストキスの相手は、本当はけいちゃんだったのに…
「…あ!」
気付いたときには既に遅くて、ニヤニヤとあたしを見る目に体中の血が引いていった。